バイトの労働条件

山本周五郎  『おさん』  の読書感想。

山本周五郎  『おさん』  新潮文庫

山本周五郎  『おさん』  新潮文庫


人情モノで、周五郎の「おさん」と、正太郎の「おせん」が良いそうだ、
なんて読んだので、まずは周五郎の「おさん」を読んだ。
全十篇470ページ程の厚目の短編集で、その中でも「おさん」は
70ページ近い短編。

玉石混交なごった煮な短編集で、「おさん」より良い短編もあれば、
満州国で発行されていたという「ますらを」という雑誌に掲載された
「青竹」という仮名遣いが不思議な作品まで収めている。

評価の高い「おさん」は、わたし的には今ひとつ。
持って産まれた女の性(さが)、この性(さが)が強すぎるばっかりに、
最初の惚れて夫婦(めおと)になれた男に逃げられ、男から男へと
渡り歩いていく悲しい後半生。
悲しい話なんだろうし、悲しい女の性(さが)を鮮やかに描いて
いるんでしょうけど、それほど名作なんかなぁ?

こういうのって、「わからない」と言うと、
「君はまだまだ男と女がわかっていないんだよ」と
訳知り顔で言う奴がいるんだろうけど、
「悲しい性」なんて分からないまま死んで結構。
なんて強がってしまいます。

それより「その木戸を通って」という「不思議小説」なるものの方が
面白かった。
記憶喪失の乙女がやってきて、乙女の持つ独特な個性が周囲の人を
虜(とりこ)にし、乙女はやがて妻となり児もできる。
しかし「その木戸を通って...」と何かを思い出しかけてゆく。
最後は再び何かを思い出した乙女は、子供も捨てて、
その木戸を通って...。

世にも奇妙な物語の原点のような、最後の瞬間にゾォっとするお話。
「不思議小説」ってことで片付けていいのか?と思うラスト。
残された夫は?子供は?みんなどうなるの?
ええ!ここでこう終わるのかぁ?という遣り方が、なんとも言えない。


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