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杉本章子  「東京新大橋雨中図」  の読書感想。

杉本章子
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杉本章子  「東京新大橋雨中図」  文春文庫

杉本章子  「東京新大橋雨中図」  文春文庫


私の住む街だけなのかも知れぬが、杉本章子の文庫本が
新刊書店では不思議と売っていない。

文春文庫はどの書店でも、そこそこの売り場を確保しているのだが、
これほど面白い、まったく驚いてしまった面白い小説である杉本章子なのに、
今は何があったのか、一冊も置いてない。
アマゾンでは普通に売っているので、絶版にはなっていない様子。

近頃の新刊書店は、どこでも経営が厳しいそうだ。
大型書店ではズラリと本が溢れ返らんばかりに新刊や名作が
陳列されているが、次から次へと新刊や話題本が出ている昨今、
売れ行きに陰りが出てきた作家はサっと外されるのだろうか。

ちなみに私は著者の文庫本はほとんど購入済みなので、
たとえ書店に売って無くても困らないのだが、この感想を
読んで興味を持った人に申し訳ない。

あなたの住む街の書店には売っているかもしれないが、
そんなわけで入手できるか心配してしまうのです。
心なしかブックオフでも以前ほど見かけなくなった杉本章子。

同じ黄色の背表紙、サ行の司馬遼太郎ばかりが相変わらずの
繁盛振りが憎たらしい。
杉本章子、今頃だけど、面白いんですよ~!

本書は三百数十ページのちょっとした長編モノ。
タイトルから察するに、橋を中心とした人情モノ(出会いと別れ)を
想像して読み始めたんですが、これが全く違った。

江戸から東京に変わるご一新から物語りは始まり、
その意外な冒頭に久々に驚いた。
しかも主人公は木版浮世絵師小林清親。
って云われても、知りませんよ、そんな絵師。

ちなみに小林清親を調べてみたら、そこそこ情報はあります。
明治初期の絵師が、どのように生き抜いてゆくのか、
こういった設定を読むのは初めてで、これは面白かった。

知らない事ばかりで、でも、明治という変わり行く東京が
描かれていて興味は尽きないし、絵師という江戸の残滓が
どのように明治に移行してゆくのか。

第百回直木賞受賞作。まったく、納得しました。


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